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TEXTとSTORYに埋もれて::あと1012日目は神山典士「キャラメル・ばらーど」と演劇談義
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2009-05-27 04:00:42
あと1012日目は神山典士「キャラメル・ばらーど」と演劇談義
神山典士/キャラメル・ばらーど(TOKYO FM 出版)
CaramelBarad.jpg

守本一夫『キャラメルミラクル』を読み終えて(あと1020日目は守本一夫「キャラメルミラクル」と演劇談義参照)、私が欲しかった情報はもっと深いところにある、とどこか物足りなさを感じていました。
小劇団運営(キャラメルボックスは動員ではもはや小劇団とは言えませんが)の成功の秘訣は何なのか。もっとキャラメルボックスの舞台裏、製作サイドのエピソードを知り得たい。

ビジネスの場に立つことになった今だからこそ、演劇にのめり込んでいた当時それほど深く関心をもっていなかった小演劇界のサクセスストーリーが輝いて映る。
たまたま古本屋で見つけた『キャラメルミラクル』で同劇団の“あらすじ”は押さえた。
さあ次は本編だ、とamazonを検索してピックアップした一冊が本作『キャラメル・ばらーど』です。

『キャラメルミラクル』が演劇初心者のライター主観で描かれた“取材本”だったのに対し、本作『キャラメル・ばらーど』は20周年の節目で変わらずに闘うキャラメルボックスの“ザ・ドキュメンタリー”という体裁。淡々とした文体は、読んでいてNHKの『プロフェッショナル 仕事の流儀』を観ているかのよう。
それもそのはず、著者の神山氏は巻末紹介によれば、大竹しのぶやつかこうへい、前田日明、伊丹十三らの武勇伝を材とした『アウトロー』や、マネックス証券・松本大や清原和博の視点で個人闘争をテーマとした『組織に頼らず生きる』、明治の柔道家で後に海外でブラジリアン柔術の礎を築いた前田光世の人物伝『ライオンの夢―コンデ・コマ=前田光世伝』の著者としても有名なノンフィクション作家でした。


■キャラメル創成期と今、そして成井豊の人物像を描く

『キャラメルミラクル』は1999年、『キャラメル・ばらーど』は2005年刊行(いずれもTOKYOFM出版)。前者が『演劇集団キャラメルボックス』創立15周年の記念本だったのに対し、本作は20周年記念。
『キャラメルミラクル』で12万人と書かれていた年間動員は、本文によれば5年後には15万人と125%成長を遂げていました。

本作は6章立て。
2005年当時の新人メンバーの目を通して20周年を迎えたキャラメルボックスの奮闘を描きながら、劇団の20年史を織り交ぜつつ成井豊のルーツを小・中・高・大学~早稲田の演劇サークル「てあとろ’50」時代と辿っていく。

プロデューサー・加藤昌史の企画力や、本作のタイトルにも込められている『キャラメルばらーど』(後の『素敵なクリスマスのつくりかた』)と加藤との出会い、シアターモリエールとの蜜月など、他にも興味深いエピソードは散見されるが、著者が強く興味を抱いていたのは“演劇人・成井豊”ではないでしょうか。
神山氏が本作の焦点としているのは、成井豊のコンプレックスと、それを原動力とする芝居づくりへの飽くなき姿勢だと感じました。

中でも、キャラメルボックスの芝居を高校野球に例えて語る成井豊のインタビュー部分は興味深く、キャラメルボックスの作劇ポリシーを垣間見たような気がします。


■キャラメルボックス成功の秘訣収穫まであと一歩?

本作では、劇団創成期、80年代当時の小演劇界の風景も語られていて、アングラ時代~小演劇ブームの一端を知ることができたのは収穫です。
今後、神山氏の演劇に関する他の著作にもあたってみたいと思いました。

さて――。
成井豊と加藤昌史の作品作づくりにおける関係性は、スタジオジブリの宮崎駿と鈴木敏夫のそれと似ている――『キャラメルミラクル』を読んでいて感じたことでしたが、本作本文中でもそのまま指摘されていました。
ただ、著者が描こうとしているのは“人間”に寄っているため、プロデューサー・加藤昌史の手腕や、キャラメルボックスの戦略、成功に至る試行錯誤を本作から多く拾うことはできません。

それらを、加藤氏自身の著書『拍手という花束のために』から多く拾うことができると良いのですが…

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